鍵屋という職業の魅力


鍵屋という職業を始めてから3年が経ちました。元々はサラリーマンをしていまいしたが、テレビで見た鍵屋の姿に興味を覚え、たまたま地元の鍵屋が求人をだしていたこともあり、転職をしました。 私が勤めている鍵屋は、社長とその奥さまと私の3人でやっている小さな店でした。奥さまは店の奥で経理関係の処理を行うことが多く、また、社長は電話で入るさまざまな依頼で店を開ける時間が長いため、主にお店でのお客様の対応は私が行っていました。 といっても、鍵屋にくるお客様の8割は「合鍵作製」なので、3か月ほどはそればかりでした。 当時、社長によく言われたのが、「特に合鍵のお客様には、誠意を尽くして仕事をせよ」といくことです。社長が出張で行う仕事を依頼してくるお客様の多くは、はじめは合鍵作製で私どものお店を利用していた方だからだ、というのが社長の言い分でした。 お客様が続けて来店し、お待たせするようなこともありましたが、決して合鍵づくりには手を抜かず、心をこめて仕事をしたという自負があります。 鍵屋に勤めて4ヶ月目となったある日、営業時間が終わった後に、お店に電話がかかってきました。その後、社長から、出張に同行するように言われました。奥さまだけをお店に残し、初めての出張に付いて行きました。 その日の出張先のお客様は、家の鍵を失くされた方でした。スペアキーは家の中にあるものの、持ち歩いていた鍵を失くしてしまったということでした。私がかつて自動車の合鍵を作ったことのあるお客様で、見覚えのある顔でした。お客様も、私の顔を覚えていただいていたようです。 社長は、道具箱から道具を取り出し、鍵穴に入れて2~3秒で鍵の開く音がしました。その手際の良さには見とれてしまうほどでした。 お客様に鍵が開いたことの報告をした時に印象的だったのはお客様が何度も繰り返して仰っていた感謝の言葉でした。鍵屋のやりがいとはこれか。と実感した瞬間でした。難しいパズルが解けた快感に興味を持って鍵屋で働き出した私でしたが、やはり人の役に立って感謝されることは大変ありがたく、うれしい事であると思ったのです。 その後、時間があるときには社長から様々な年代・パターンの鍵の開け方、そして鍵屋としての心構えを学び、1人で鍵開けの出張にも行けるようになりました。 新しいタイプの鍵が次々と出てくるので、日々勉強の毎日ですが、鍵屋の誇りを胸にこれからもがんばります。